自由電子レーザーの解析 – 1

はじめに

自由電子レーザー(Free Electron Laser; FEL)は、高エネルギー電子による光(電磁波)の増幅である。

Madey によるFEL の提案論文では、電子と仮想光子(アンジュレータ磁場)の散乱を誘導放出として扱うことで、レーザーの増幅原理を示した(量子力学的描像)。その後、Hopf らの論文をはじめ、レーザーを「波」として扱う「古典力学的描像」が、FEL解析の主流となった。

ここでは、古典力学に基づく FEL 解析の一例として、電磁場の波動方程式と電子の運動方程式からスタートし、レーザー場の複素成長率(複素波数)を決定する 3 次方程式=cubic equation の導出までを示す。

一連の方程式の導出は、1996年にStanford大学で開講されたDavid Whittum による “Physics of Free-Electron Lasers” の講義ノートに基づくものである。当時の資料を読み直すと、

This is a 3 unit course, meeting Tuesday & Thursday 1:15-2:30 PM, in the Applied Physics Bldg., Room 200.

とある。階段式の広めの教室だったのを覚えている。

私と並んで講義を受けていた博士課程の学生の一人、Zhirong Huangは、その後、FELの理論家として大活躍し、2014年に FEL Prize を受賞している。Whittum の講義が Huang にとって FEL 理論を学ぶ入口となったように、このメモをきっかけにして、FEL 理論に興味をもつ若手研究者が現れてくれるとありがたい(もちろん、シニアの研究者も歓迎)。

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