前回までに、2つのエネルギー準位をもつ2個の原子が共鳴的に結合した系において、系の取りうるエネルギー準位とその遷移確率を求めた。この遷移確率を用いて、完全反転分布(2個の原子ともに上準位にある)からの光子の放出確率を時間の関数として求めてみよう。
この系は3つのエネルギー準位(4つの状態)を持つ。時刻において2個の原子ともに上準位にある時、
における各準位の存在確率は以下の微分方程式に従う。下付き添え字の
は二つの原子がともに上準位、
はともに下準位、
と
は上準位と下準位の組み合わせで波動関数が対称、反対称の場合である。
これを解いて、
となる。光子の放出確率は
である。
ところで、原子が1個の場合、原子が上準位に存在する確率は次式に従う。
これを解くと
となり、上準位の存在確率は指数的に減少する。このときの時定数(寿命)が である。準位間の遷移にともなう光子の放出確率は
である。
2個の原子が独立に存在する場合と共鳴的に結合する場合の光子の放出確率の比は
となる。
2つの場合について光子の放出確率を図示すると以下のようになる。2個の原子が共鳴的に結合することで、光の放出確率は指数的な減衰とは異なる曲線を示す。共鳴的に結合する原子の数が増えるとこの相違はさらに顕著になる。