Dicke のSuperradiance -5

いよいよ完全反転分布したN個の2準位原子からなる系からの光放出の時間波形の計算を行う。

下図のようにエネルギー準位のラベルづけを行う。

n-level-2

準位MからM-1への遷移確率は、前回までに求めた式を M で書き直して

\displaystyle \gamma_{M,M-1} = \gamma (N/2+M)(N/2-M+1)

である。

時刻tに準位Mに系の状態を見出す確率は次の微分方程式に従うことがわかる。

\displaystyle \frac{d P_M(t)}{dt} = \gamma_{M+1,M}P_{M+1}(t) - \gamma_{M,M-1}P_{M}(t)

完全反転分布の初期値 P_{N/2}(0)=1, P_{M}(0)=0 \;\; for \;\; M \ne N/2について、この微分方程式を解けば光放出の時間波形を求められる。しかしながら、N \gg 1 に対して計算するのは煩雑である。ここでは別の方法で近似計算を行う。

完全反転分布した状態から n 個の光子を放出する平均時間を\bar t (n) と表すことにする。各準位間の遷移の平均時間を足し合わせれば任意の n について \bar t (n) を計算できて、

\displaystyle \bar t (n) = \sum_{M=N/2-n+1}^{N/2} \gamma^{-1}_{N,M-1}
\displaystyle = \gamma^{-1} \sum_{M=N/2-n+1}^{N/2} \left [(N/2+M)(N/2-M+1) \right ]^{-1}

N \gg 1 の場合、和を積分に置き換えて近似計算ができるので、

\displaystyle \bar t (n) = \gamma^{-1} \int_{N/2-n}^{N/2} \frac{dM}{(N/2+M)(N/2-M+1)}
\displaystyle = \left . \frac{2\gamma^{-1}}{N+1} \tanh^{-1} \frac{2M+1}{N+1} \right |_{M=N/2-n}^{M=N/2}

これを n について解くと

\displaystyle n = N/2 +(N/2)\tanh \left [ \gamma (N/2) (\bar t - t_D) \right ]
\displaystyle t_D = (\gamma N)^{-1} \ln N

が得られる。光放出の時間波形は

\displaystyle I(t) = \frac {dn}{dt}=(1/4) \gamma N^2 \text{sech} ^2 \left [ (1/2) \gamma N (t-t_D) \right ]

と求められた。

カテゴリー: レーザー パーマリンク

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